畳縁の種類について – なぜ畳縁を踏んではいけない??

畳縁(たたみべり)について

畳縁(たたみべり)について
今回は畳の縁の部分である畳縁(たたみべり)と呼ばれる部分についてです。
畳縁はシンプルなデザインの畳にアクセントをつけてくれます。そんな畳縁、「踏んではいけない」と聞いた
ことはありませんか?実はその理由は1つではなく、数多くあるのです。今まで何となく踏まないようにして
いた畳縁。その理由を知るのも面白いですよ。

無地縁(むじべり)

畳縁は大きく2種類に分けられます。その1つが無地縁です。無地縁とはその名の通り、柄が入ってない畳縁の
ことです。その特徴は、シンプルなデザイン。深い緑や藍色など、一見地味な色が多いです。部屋に落ち着い
た印象を与えてくれます。

柄縁(がらべり)

畳縁のもう1つの種類が柄縁です。柄縁は、模様が入っている畳縁のことです。近年は柄縁の畳が大多数を占め
ます。柄縁はシンプルなデザインの畳にアクセントを加えてくれます。ここを変えるだけで部屋の印象が変わ
ることが多々あります。柄縁を選ぶのであれば、デザイン性を意識してじっくり選んでみてください。

畳の縁を踏んではいけない理由

「畳の縁は踏まないで」子供のころ、このようなことを言われたことはありませんか?確かに畳の縁は様々な
理由で踏んではいけないとされています。その理由を詳しく見ていきましょう。

畳の縁や敷居は結界の意味

畳の縁や敷居には、結界と呼ばれる1種の境界の意味があります。敷居は部屋と廊下を隔て、畳の縁はお客さ
んと家主を区別します。このような結界を踏んでしまうとその家の空間様式を壊してしまい、格式を無視した
行為ととられます。その意思はなくても、家主に失礼な態度だとされるので踏んではいけません。

畳縁の模様にも深い意味

畳縁には麻の葉模様など、模様が描かれていることがあります。これらの模様には、幸福を呼ぶための願いが
込められています。例えば、麻の葉模様なら強力な魔除け、七宝模様なら円満の意味です。特に昔はそれらの
模様を植物で染色していたこともあり、傷みやすかったです。せっかく、願いを込めた模様だとしてもすぐに
ダメになったら意味はありません。早く傷んでしまうのを防ぐためにも畳縁を踏むことは避けられてきました。
また、麻の葉、七宝以外にも幸福を呼び込むための模様はまだまだあります。ここではすべてを紹介すること
はできませんが、自分の使っている畳縁の模様の意味を調べてみるのも面白いと思います。

畳縁に家紋を入れていた

昔の武家社会では、家紋を入れた柄の畳縁が使われていました。そのため、畳縁を踏んでしまうと「その家系
全体を馬鹿にした」と捉えられてしまいます。特に家柄や身分を重視していた時代では絶対にやってはいけな
い行為で、相手への失礼に当たります。踏まないように気を付けましょう。

書院造大広間の畳縁

書院造とは、室町時代に武士が住む家に取り入れた住宅様式のことです。大きな特徴は床の間や違棚(ちがい
だな)の存在です。現代の和室につながる作りも多数見られます。では書院造大広間とはどういうスペースな
のでしょうか?それは、書院造の部屋を二の間、三の間と何部屋もつなげた場所のことです。時代劇などで将
軍が家臣を集めて頭を下げさせる場面があります。あれは、ふすまで仕切られた複数の部屋を1つの大広間と
して使っていますよね。あの場所が書院造大広間なのです。
このような形の部屋を作っていたのは、武士の格差を表すためです。身分の高いものは将軍に近いところに座り、
逆に低いものは三の間や四の間に座っていました。この格差をさらに細かく表すことを助けたのが、畳縁です。
身分によって畳縁を基準にして座る場所が決まっていました。特に江戸城や二条城など、多くの大名が集まる場
所でそういう決まりが細かくあったようです。これを踏んでしまうと、家柄や身分を軽んじることにつながりま
す。そう言った意味でも踏んではなりませんでした。

下から刺されないように

戦国時代には敵の勢力を弱めるために暗殺がしばしば行われていました。その方法の1つとして畳の下に忍び、
畳と畳の間から槍を突き出して暗殺するというものがあります。畳縁を踏んでしまうと、床下に潜んでいる暗
殺者に漏れる光の変化から居場所を特定されやすくなり、暗殺される危険が高まります。いつ命を狙われるか
わからない動乱の時代には家でも気を抜いてはならなかったのです。畳縁を踏まないことを習慣化することで、
予期せぬ暗殺に常に備えていたことが分かります。
もし、畳縁を踏んでしまい暗殺されかけたとなると武士にとって恥ずかしいことです。なぜなら、油断してし
まったということの証拠になるからです。武士は油断や恥をとことん嫌います。新渡戸稲造の著書「武士道」
にこんな言葉があります。「恩借の金子御返済相怠り候節は衆人の前にてお笑いなされ候とも不苦候」これは、
「お金を返せなかったら、大勢の前で笑ってもらっていいです」という意味です。現代なら、「いやいや、お
金を返さないとだめでしょ」となってしまいそうですが、当時はそれぐらい恥を嫌っていたのですね。
命を守るだけでなく、恥をかいて周りから馬鹿にされないためにも畳縁は踏んではなりませんでした。

躓かないように

畳縁は多少の厚みがあり、周りより高くなっています。ここでは躓いてしまう危険があります。お年寄
りの方や小さい子供は少しの段差で躓いてしまうことも多々あります。軽症で済めばよいですが、特に
お年寄りの方は転倒すると大きなけがにつながる可能性が高いです。怪我をせず、安全に暮らすために
も畳縁を踏まないことは大切ですね。

格式を表す、畳のへりの色柄の例

畳縁は身分や格式を表す色柄があります。ここでは代表的なものを紹介します。

繧繝縁(うんげんべり)

この柄は天皇・皇后・皇太后・太皇太后・上皇、つまり天皇・皇后や天皇・皇后経験者が使います。
つまり、最も格式高い柄だといっても過言ではありません。カラフルな色が多く使われており、畳
縁にしてはかなり派手です。現代ではひな人形の台座の畳に似たものが使われています。

高麗縁(こうらいべり)

高麗縁は白地に黒の花文を染めたものです。こちらは親王や摂政・関白、大臣、公家が使います。
高麗縁には、大紋高麗縁と小紋高麗縁の2種類があります。公家が主に使っていた小紋高麗縁は目に
することが少なくなりました。なお、大紋高麗縁は現在でも寺社や茶室などで見ることができます。

紫縁・黄縁

これらは主に貴族が使っていた畳縁です。殿上人のうち四位五位の人々は紫縁、六位以下では黄縁
を使っていたようです。ちなみに、聖徳太子の冠位十二階でも紫は最も高い身分の方を表す色でした。
紫は昔から高貴な色として扱われていたことが分かります。さらに、庶民は畳縁をつけてはいけないと
いう時代もありました。自由に畳が使える現代に感謝ですね。

まとめ

畳縁には、無地縁と呼ばれる柄の入っていないものと、柄縁と呼ばれる柄の入っているものがあり
ます。無地縁はシンプルな印象を部屋に与え、柄縁は畳のデザインのアクセントになりやすいです。
近年は、柄縁の人気が高くなっています。また、畳の縁は様々な理由で踏んではいけないとされて
います。相手に失礼だと受け取られる、転倒の原因となりうるため危険であるというのが主な理由
です。畳の縁には身分を表す意味もあり、天皇などは特別な畳縁を使っていました。身分に厳しい
時代などは、庶民は縁がある畳を使えませんでした。畳縁について詳しく知ることで、「こういう
畳縁にしてみたい」と少しでも考えてくれたらうれしいです。
タタミズキ

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